屑 作 成 レ シ ピ




全部失くなってから、気づいてくれる?


なんて、
アイツの中にほんの少しでもわたしが残っていれば、の話。



玄関にすべてを詰め込んだゴミ袋をくくって、
放り投げた。
ガラスが割れる、音がする。


プルルルル、何回もコール音を鳴らしたスマートフォンを、ようやく繋いだ。




【セイ、もう別れよう】





『―――美空、いまどこに』

「それは、わたしが言う言葉じゃないの?」

『―――ッ、』

「いらないならさあ、もっと早く手放せばよかったんじゃない?」




電話の向こうで、息の切れる音がする。
走っているのだろうか、足音まで届いてしまっている。


いまさら走ったってどうしようもないんじゃない?

セイは、本当にどうしようもない男だ。





『俺、ずっと』

「ねえ、覚えてる?わたしがいつだったか、付き合う前に航星に聞いた質問」

『―――――、』

「ずっとそばにいるために、理由っているのかな、って」




もう二度と返ってこない部屋を見渡した。
ゴミ袋ひとつで収まった私との思い出を、焼き殺すのはセイだ。



ああ、ほんと。

あっけない世界だった、この部屋は。




頬を濡らす涙は、ただ悲しいだけじゃない。

哀しかったんだ、すべてが。




「―――ないんだよ、」

『……っ、』


「わたしが航星のそばにいたい理由なんて、なかった」



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