屑 作 成 レ シ ピ
扉を開いて、外に出る。
鍵を閉めて、ポストに突っ込んだ。
カラン、音を立てたそこに背を向けた。
もう、帰らない。
見慣れた1K、セイの生きるちっぽけな惑星。
ああほんと、好きだったなあ、この場所が。
いまではもう、だいきらいだ。
「理由がなくても、そばにいたいと思えるたったひとりだった」
階段を、一段ずつ下っていく。
このオンボロの階段も、いまだけは、ボロボロに崩れてしまえばいいのにって思った。
なんでも許してくれていた。
男友達だと割り切れるわたしと、
男は何するかわかんないと割り切れないセイ。
オンナノコと遊んでも別に割り切っていたわたしと、
すこしはやきもち焼いてほしかったセイ。
不安があれば離れずに済むと思っていたセイと、
不安が一つもないからそばにいれると思ったわたし。
お互いの妥協点を探して、それでもそばにいたかった。
理由なんてなくても、わたしはセイのことが好きだった。
「―――やっと、言えるよ」
『美空、』
「航星はやっと、わたしから離れられるよ」
後腐ればかり残っていたのは、
部屋に戻るたびに、どこかにわたしがいるからでしょう。
一度手放すつもりでわたしじゃない子に手を伸ばしたのなら、
その時点で、わたしへの罪悪感は振り切ってほしかった。
『……美空、なに、言って』
「楠に会うっていう嘘はさ、さすがにばれるって思わなかった?」
『っ、』
「もう少し頭使いなよ、航星ならもっとうまい嘘つけたでしょう」
―――ねえ、それとも。
「気づいてほしかった?」
『―――、』
「気づいてたことに、気づいてくれなかったのにね」