宝石戦士ミドリ
第1話 孤独な少女と宝石と
令和6年、7月11日、金曜日。7時半。パンをくわえた女子高生が走っていた。
学校に着く直前、なんとか時間を余してパンを食べきると、校門をくぐる。
女子トイレの鏡の前で乱れたダークブラウンの髪を結び直し、きれいにポニーテールがきまると、教室に入った。
教室に入ると親友の仲川 紫珠徠が既に席について読書をしていた。
「紫珠徠、おはよう」
「おはよう、翠。今日は遅かったね」
本から視線を外さないまま紫珠徠が言う。
「寝坊しちゃってさ。えへへ」
「そういえば、これ、神埼から預かってるよ」
神崎奏は市川翠の同級生だ。
翠は紫珠徠から渡された手紙を受け取る。
綺麗な便箋には{市川さんのことが好きです。付き合ってください}とある。
「あぁ、また私を人間として好きだって誉めてくれてるのね、神崎くん」
「翠ってば、まーた勘違いしてる。神崎は翠のこと、一人の女性として見て好きだって言ってるんだとあたしはおもうんだけどな~」
「私には女性的魅力なんてどこにもないよ。おまけにどんくさいし」
1時間目の予鈴が鳴る。
放課後、神崎奏に呼び出された翠は校内の体育倉庫裏に来ていた。
「呼び出しなんてどうしたの? 私、何かしちゃったかしら?」
「その、ぼ、僕と付き合ってください!」
「手紙、読んだけど、私のどこが良いの? 女の子としての魅力なんて、私にはひとつもないと思うんだけど?」
「まず、貴女はとても美人さんだし、誰に対しても優しいところとか素敵で。貴女がいるだけでクラスに花が咲いたような印象を受けて、そんな市川さんが好きなんです。どうか僕と付き合ってください」
「待って、待って。私、そんな美人じゃないと思うよ。私より美人な人、うちのクラスだけで見てもいっぱい居るよ」
「市川さんには市川さんの魅力があると僕は思うんです。それが、今僕が言ったことです」
「うーん、そんなに私ってきれいなのかなぁ? もっと他に私よりきれいな人いっぱいいると思うんだけど」
「市川さんには市川さんにしかない美しさ、個性があって、そこに僕は惚れたんです」
翠はプリーツスカートのポケットから手鏡を取り出し、自分を鏡で見る。
「うーん。でも、考え直してみたら、神崎君のお墨付きの容姿をしているってことだよね」
「そうです、そうです! だから、そんな市川さんが好きだから、どうか僕とお付き合いを・・・・・・!」
神崎奏が翠に向かって片手を差しだし、頭を下げる。
「わかった、わかったよ神崎君。付き合おう」
神崎が顔を上げて翠のことを見る。
「本当ですか?!」
頷く翠。
「よっしゃー!!」
神崎は歓喜した。
放課後、翠は神崎と途中まで一緒に帰った。その途中で、2人は互いに連絡先を交換した。
学校から帰ると、窓辺に何やら15センチ大の子うさぎが佇んでいた。
「おかえり、翠」
「うわ、うさぎがしゃべった」
「驚かせてしまったのなら申し訳ない」
「それで、私に何の用?」
子うさぎは窓枠からベッドの上に移動し、ちょこんと座った。
首にはエメラルドグリーンの宝石が輝いている。
「このペンダントを渡しに来た」
翠は子うさぎからペンダントを受け取り、自分の首にかけた。
翠の胸元でペンダントに付いているエメラルドグリーンが輝く。
子うさぎが説明する。
「今日、君にペンダントを渡しに来たのは、君にそのペンダントのもつチカラで悪と戦ってほしいからだ。どうして君かって? 君なら悪の組織チーム・マールと対等に戦えるだけの素質があるとみたからなんだ」
「私なんかが勝てるかなぁ? でも、子うさぎさんのお墨付きなら、勝てるかもしれない」
「その調子だよ、翠。それと、私の名前はカントだ。これから君と他のメンバーと一緒に戦うことになる。宜しく」
「こちらこそ、宜しく、カント」
すると、早速、翠の胸元の宝石が発光した。
「その宝石が光るのは敵の接近を知らせるのと、変身の合図だ。覚えておくといい」
間もなく、翠は胸元の宝石の発光による変身を遂げる。
緑のプリーツスカートと胸元のエメラルドグリーンの宝石が印象的な戦闘着に着替え終わり、緑色のポニーテールにヘアスタイルを変わると、変身が完了した。
「鏡で自分を見てる場合じゃないぞ。急ぐんだ、宝石戦士ミドリ!」
ミドリは鞄を置いた。
「どうやって移動するの?」
「ムーヴメントって唱えるんだ」
「ムーヴメント!」
カントとミドリは敵の居場所へ瞬間移動した。
戦場はデパートの屋上だ。シーソーや砂場で遊んでいた子供たちとその親たちは皆チーム・マールに洗脳され、闇落ちしている。
よく見ると、既に剣で戦っている味方のメンバーらしき姿が。
更によく見ると胸元にはアメジストが発光していて、紫色のプリーツスカートを|穿<<は>>いている。
その横顔は-ー仲川紫珠徠その人だ。
「紫珠徠?! あなたも宝石戦士なのね?!」
「そうよ。あんたの味方。細かい話は後で! ほら、後ろ!!」
振り向くとミドリを狙う敵が迫っている。
「カント、どうしたら良いの?」
「マギ・エレメンツって唱えて! そしたら魔法の杖が出現するから、それが出たらその杖から放たれる魔法を使って敵を倒すんだ!!」
「マギ・エレメンツ!」
唱えると、確かに緑色の魔法の杖が出現した。
「フラッシュグリーン!!」
気付けば唱えながら緑色の杖を斜め上から下へ振っていた。
しかし、唱えるのが1秒遅かったのか、ミドリは敵からの攻撃を受けてしまう。
「うぅ、頭がクラクラする・・・・・・」
「クックック。俺は矢ヶ井颯。魔女グランマの使いでここで使命を果たしに来た。今日こそは絶対におまえたちを死の淵に追いやってやる!!」
「そうはさせないわ。この宝石戦士が許さないもの!!」
1度倒れたミドリは立ち上がるなりまた唱える。
「フラッシュグリーン!! フレイムグリーン!!」
懸命に敵に向かって杖を何方向にも振る。
すると、杖から放たれた緑色の火で火傷した敵が更に攻撃を仕掛けてくる。
戦場に来てから2度目の危機に陥った。
ミドリは倒れ、動けなくなってしまう。
令和6年、7月11日、金曜日。7時半。パンをくわえた女子高生が走っていた。
学校に着く直前、なんとか時間を余してパンを食べきると、校門をくぐる。
女子トイレの鏡の前で乱れたダークブラウンの髪を結び直し、きれいにポニーテールがきまると、教室に入った。
教室に入ると親友の仲川 紫珠徠が既に席について読書をしていた。
「紫珠徠、おはよう」
「おはよう、翠。今日は遅かったね」
本から視線を外さないまま紫珠徠が言う。
「寝坊しちゃってさ。えへへ」
「そういえば、これ、神埼から預かってるよ」
神崎奏は市川翠の同級生だ。
翠は紫珠徠から渡された手紙を受け取る。
綺麗な便箋には{市川さんのことが好きです。付き合ってください}とある。
「あぁ、また私を人間として好きだって誉めてくれてるのね、神崎くん」
「翠ってば、まーた勘違いしてる。神崎は翠のこと、一人の女性として見て好きだって言ってるんだとあたしはおもうんだけどな~」
「私には女性的魅力なんてどこにもないよ。おまけにどんくさいし」
1時間目の予鈴が鳴る。
放課後、神崎奏に呼び出された翠は校内の体育倉庫裏に来ていた。
「呼び出しなんてどうしたの? 私、何かしちゃったかしら?」
「その、ぼ、僕と付き合ってください!」
「手紙、読んだけど、私のどこが良いの? 女の子としての魅力なんて、私にはひとつもないと思うんだけど?」
「まず、貴女はとても美人さんだし、誰に対しても優しいところとか素敵で。貴女がいるだけでクラスに花が咲いたような印象を受けて、そんな市川さんが好きなんです。どうか僕と付き合ってください」
「待って、待って。私、そんな美人じゃないと思うよ。私より美人な人、うちのクラスだけで見てもいっぱい居るよ」
「市川さんには市川さんの魅力があると僕は思うんです。それが、今僕が言ったことです」
「うーん、そんなに私ってきれいなのかなぁ? もっと他に私よりきれいな人いっぱいいると思うんだけど」
「市川さんには市川さんにしかない美しさ、個性があって、そこに僕は惚れたんです」
翠はプリーツスカートのポケットから手鏡を取り出し、自分を鏡で見る。
「うーん。でも、考え直してみたら、神崎君のお墨付きの容姿をしているってことだよね」
「そうです、そうです! だから、そんな市川さんが好きだから、どうか僕とお付き合いを・・・・・・!」
神崎奏が翠に向かって片手を差しだし、頭を下げる。
「わかった、わかったよ神崎君。付き合おう」
神崎が顔を上げて翠のことを見る。
「本当ですか?!」
頷く翠。
「よっしゃー!!」
神崎は歓喜した。
放課後、翠は神崎と途中まで一緒に帰った。その途中で、2人は互いに連絡先を交換した。
学校から帰ると、窓辺に何やら15センチ大の子うさぎが佇んでいた。
「おかえり、翠」
「うわ、うさぎがしゃべった」
「驚かせてしまったのなら申し訳ない」
「それで、私に何の用?」
子うさぎは窓枠からベッドの上に移動し、ちょこんと座った。
首にはエメラルドグリーンの宝石が輝いている。
「このペンダントを渡しに来た」
翠は子うさぎからペンダントを受け取り、自分の首にかけた。
翠の胸元でペンダントに付いているエメラルドグリーンが輝く。
子うさぎが説明する。
「今日、君にペンダントを渡しに来たのは、君にそのペンダントのもつチカラで悪と戦ってほしいからだ。どうして君かって? 君なら悪の組織チーム・マールと対等に戦えるだけの素質があるとみたからなんだ」
「私なんかが勝てるかなぁ? でも、子うさぎさんのお墨付きなら、勝てるかもしれない」
「その調子だよ、翠。それと、私の名前はカントだ。これから君と他のメンバーと一緒に戦うことになる。宜しく」
「こちらこそ、宜しく、カント」
すると、早速、翠の胸元の宝石が発光した。
「その宝石が光るのは敵の接近を知らせるのと、変身の合図だ。覚えておくといい」
間もなく、翠は胸元の宝石の発光による変身を遂げる。
緑のプリーツスカートと胸元のエメラルドグリーンの宝石が印象的な戦闘着に着替え終わり、緑色のポニーテールにヘアスタイルを変わると、変身が完了した。
「鏡で自分を見てる場合じゃないぞ。急ぐんだ、宝石戦士ミドリ!」
ミドリは鞄を置いた。
「どうやって移動するの?」
「ムーヴメントって唱えるんだ」
「ムーヴメント!」
カントとミドリは敵の居場所へ瞬間移動した。
戦場はデパートの屋上だ。シーソーや砂場で遊んでいた子供たちとその親たちは皆チーム・マールに洗脳され、闇落ちしている。
よく見ると、既に剣で戦っている味方のメンバーらしき姿が。
更によく見ると胸元にはアメジストが発光していて、紫色のプリーツスカートを|穿<<は>>いている。
その横顔は-ー仲川紫珠徠その人だ。
「紫珠徠?! あなたも宝石戦士なのね?!」
「そうよ。あんたの味方。細かい話は後で! ほら、後ろ!!」
振り向くとミドリを狙う敵が迫っている。
「カント、どうしたら良いの?」
「マギ・エレメンツって唱えて! そしたら魔法の杖が出現するから、それが出たらその杖から放たれる魔法を使って敵を倒すんだ!!」
「マギ・エレメンツ!」
唱えると、確かに緑色の魔法の杖が出現した。
「フラッシュグリーン!!」
気付けば唱えながら緑色の杖を斜め上から下へ振っていた。
しかし、唱えるのが1秒遅かったのか、ミドリは敵からの攻撃を受けてしまう。
「うぅ、頭がクラクラする・・・・・・」
「クックック。俺は矢ヶ井颯。魔女グランマの使いでここで使命を果たしに来た。今日こそは絶対におまえたちを死の淵に追いやってやる!!」
「そうはさせないわ。この宝石戦士が許さないもの!!」
1度倒れたミドリは立ち上がるなりまた唱える。
「フラッシュグリーン!! フレイムグリーン!!」
懸命に敵に向かって杖を何方向にも振る。
すると、杖から放たれた緑色の火で火傷した敵が更に攻撃を仕掛けてくる。
戦場に来てから2度目の危機に陥った。
ミドリは倒れ、動けなくなってしまう。
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