粗大ごみを拾ってしまった(恋する冥府の王・死神シリーズ2)
<加賀城との遭遇・10時50分>

加賀城が少し顔をあげ、
かすれた声をだした。

「・・鍵を失くしてしまったらしくて・・・
「鍵開けを頼もうと思ってたけど・・スマホもなくて・・」
加賀城がせき込んだ。

ミイヤがかがんで覗き込んだ。
「あの、具合・・
悪いのですか・・?」
「せきが・・止まらなくて・・」
加賀城が苦し気に答えた。

確かに具合が悪そうだ・・
つらそうに見える。

廊下の外から雨のしずくが
打ちっぱなしのコンクリートにはねて、
冷気がしんしんと伝わる。

このまま、ここで放置するのか?

ここで死なれたらどうする?
見て見ないふりをするのか?
ミイヤは激しく葛藤した。

捨て猫を見つけて保護するかどうか・・
というあの葛藤に似ている。

ここは人道的な対応を、するしかない。
もし、ここで見捨てて何かあったら寝覚めが悪い。

「・・あの、私、
このマンションの管理組合の役員なので、
何とか・・お手伝いします」

しばらく加賀城は沈黙していたが、すこし戸惑うように

「え?・・何で・・」
ミイヤは言葉を続けた。

「具合が悪そうにみえるし・・・
鍵開け業者さんと連絡がつくまでは・・
ここでは待てないでしょう?」

そう言ってミイヤは急いで
自分の部屋の鍵を開けた。

「どうぞ、入ってください、
お茶を入れますから」

加賀城が壁に手をつきながら
やっと立った。

せき込みがひどい。
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