粗大ごみを拾ってしまった(恋する冥府の王・死神シリーズ2)
<ミイヤの部屋・翌日・朝9時>

朝9時過ぎだった。
ピンポーン
チャイムが鳴った。

ミイヤが急いで確認すると
インターホンのモニター画像には、
うつむいている加賀城の姿が写っていた。

突然の訪問に
ミイヤは驚いたが・・・
次に怒りがこみあげてくる。

「まったく、あれだけ迷惑かけて・・もうっ!」

ミイヤは怒りで、勢いよくドアを開けた。

「なんで・・・・!!!」

目の前に出しだされたもの・・・

一抱えもある本当に大きなバラの花束だった。

白に花弁のふちが薄いピンクに染まっているバラが山ほど。

白いかすみ草が、ところどころやさしげに、アクセントを演出している。

加賀城が頭をさげて、両手でバラの花束を差し出していた。

「あの・・迷惑かけてすみません。これ、お詫び・・です」

ミイヤは怒りが吹っ飛んでしまった。
それほどに美しい、バラの大きな花束。

加賀城は頭を下げたまま、花束を掲げた。

「・・これ受け取ってくれますか?」
「あ・・ありがとう・・」
ミイヤは花束を受け取った。

こんな豪華な花束・・
もらったことがない。

それに、これって、
TVのバラエティー番組の
「お付き合いしてください」
の告白タイムみたいじゃないか・・

ミイヤはちょっと笑ってしまった。

「んじゃ・・」
加賀城が逃げるように去ろうとした時
「待って!!鍵・・
返してください!!」

ミイヤはすかさず片手で彼の腕を
つかんだ。

振り向いた加賀城は、
いたずらを見つかったような子どものような顔をして

「うーん・・ごめんなさい・・」
そう言うと、
首から細い金鎖を取り出した。

鎖の先端には406の部屋の鍵が
揺れている。
「失くすとまずいから」

言い訳のように言って、
鎖ごとミイヤに差し出した。

受け取った鍵は少し温かい。

そうだ、何か言わなくては・・

「ちゃんと、薬飲んで!
無理しないでくださいね!」
「はい」

加賀城はそれだけ答えると、
脱兎(だっと)のごとく
黒のコートを、(ひるがえ)してエレベーターのほうに向かった。

あの人は自分の部屋に戻るわけではなかったのか・・

ミイヤは大きなバラの花束に
幸せを感じつつ、
加賀城の背中を見送った。

どうやら悪い人ではないようだ。
よくわからないが・・

でも破局したんだ・・
あのきれいな女優さんと・・

ミイヤは金鎖の先端で揺れる、
自分の部屋の鍵を見た。

鎖は封筒に入れて、
405のポストに入れて返しておけばいい。


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