粗大ごみを拾ってしまった(恋する冥府の王・死神シリーズ2)
<花火大会・18時25分>

「おばさんは恋愛対象じゃないから・・
あなたには、もっと若くてきれいな人がいるから・・」

「やだ」
加賀城の答えは簡潔だった。

瞑王自身がこのやりとりを楽しんでいた。

座敷童の言葉のように簡潔に・・・おもしろい・・
もっとせめてみたい。

「ネコが欲しいなら・・
キスして・・」

加賀城の腕に少し力が入った。
困ってミイヤは周囲を見回した。

「人が来るから・・・」

「みんな花火を見ているから・・
誰も来ない」

そう言うなり、
加賀城はミイヤの首元に顔を埋めた。
やはり・・ジャスミンの香りがする。

ミイヤは少し考えているようだったが、
自分の左手の腕の(そで)をまくった。

「これ・・・見て」

腕の内側、ひじ下から手首に向かって、
何本もの<みみずばれ>のように、多くの筋がついている。

リストカットの跡だった。

すでに、なおってはいるが傷跡は痛々しい。

「ようやっと収まってきたの。
死ぬのは怖いけど、生きていたくない・・とも思っていた」

加賀城はミイヤの肩越しに、左腕を凝視している。

ミイヤの目から涙がこぼれ落ちた。

「生きる・・・のがつらい・・
でも、生きなくてはならないから」

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