粗大ごみを拾ってしまった(恋する冥府の王・死神シリーズ2)
<花火大会・19時30分>

ドーン・・ドーン・・

暗闇の中、
花火がどんどん上がっては、
その大輪の花が散っていく。

はかないからこそ美しさが際立つ。

現世も同じようなものだ・・
瞑王は思った。

その中でつい何かを求めてしまう。
満たされたいと思う。

「もう一回して・・」

そう言って、加賀城の手に少し力が入った。

「・・あとで・・」
ミイヤは小さな声で答えた。

こんな風な答えで、いいのだろうか・・・

考えてしまったが・・・続けた。

「それと・・あの、たばこ、
やめなさいね。体に悪いから」

加賀城は少し笑って、
「そうだね・・俺がパパになったら止めるけど・・」

「パパって・・」

ミイヤは一瞬、驚きの声をあげた。

「うーんと、一緒に暮らせば・・
当然そうなるでしょ」

ミイヤを抱きしめたまま、
加賀城が答えた。

これって、プロポーズ?
同棲の誘い?事実婚?・・

この人はどこまで考えているの?

ミイヤは息を吐くように、
ため息をついた。

でも、今だけは・・・
この時だけは・・・

この人の優しさに浸っていたい。

花火を一緒に見ているだけでいい。

これからの事・・
そして現実は・・・後で考えよう。
「そう・・ね」

ミイヤは微か(かすか)にうなずいた。

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