君の笑顔が見たくて〜僕たちの夏の恋物語〜
部屋に入るとなんとも言えない
甘い匂いがした。


「雫久ちゃん、先生ねカップケーキ作って来たの。ココアが好きってきいていたから、
よかったら飲まない?あったかいの?冷たいの?どちらが良い?」


私は、席に座りながら


「温かいのが良いです。」


と答えた。


「了解〜」

先生は、柔らかな声で、上手に
話をしてくれリラックスさせてくれた。


目の前にしばらくして
マグカップに入った温かなココアが机に置かれた。

マグカップは、両手で持てるくらいの熱さで、フーフーと少し冷ましてから
一口飲んだ。


丁度いい熱さで、甘くて…ホッとする。


だけど、この隣には…ゆうきくんがいてるのに…。気になって落ち着かない。
何故、今日はあってはいけないんだろ…?


「あの、先生。ゆうきくんは、このカップケーキは食べれたのかな?」


「?あぁぁ〜…………。
ヤダっ。食べてないわ。私ったら気がきかなくて…。雫久ちゃん、渡しに行ってくれる?」


「えっ?…でも……。小林先生が…。会えないって…」

「……うーん。会いに行くんじゃないよ?
ケーキ渡すだけッ。お願いしていい??
渡すだけっ」


「えっ!??!あっ……はっ…はいっ!!先生!」


田中先生は、ニコッと笑うと
ケーキを二つ箱に詰めて、ホークを入れて
私に持たせてくれた。

私は、嬉しくて
先生にちゃんとお礼も言わずに指導室を飛び出した。

「落ち着かなくちゃ…。会いに行くんじゃない、、ケーキを渡して…。顔だけ
ゆうきくんの顔だけ」


第一指導室の扉をノックした。

中から男性の声で、

「はいっ。どうぞ」


と声がした。


私は、高鳴る心を必死に抑えながら
扉を少しずつ開けた。


扉の向こうに返事してくれた先生がまず
見えた。

そのまま、扉を大きく開き

「失礼します!」

そう言って部屋に一歩足を踏み入れた。

「…あっ!…」

驚いたような声がした。

少し高めの懐かしい声が…


1日聞いてないだけなのに…懐かしい声だ。


私は、彼の方を向いた。


「…あっ!」

彼が居るのはわかっているのに…
私も思わず声が漏れてしまった。

……今にも彼に飛びつきたい…。
だけど、今は…ケーキを渡しに来ただけ。
気持ちを抑えなきゃ!

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