転校生は双子くん
珍しく酔って帰ってきた父が、俺達を呼んだ。
「涼介、裕次、こっちにおいで。
パパとお話ししよう」
こんな事は初めてだった─…
子供の俺達にもまったく関心を寄せなかった父が、俺達と話したいと言ったのだ。
俺たちは素直に喜んだ。
「パパ、おかえりなさい!」
「お話しってなに?」
絵本の続きを聞くみたいにワクワクして、父の言葉を待った。
そして、父は言った。
「涼介、裕次。どっちか優秀なほうにパパの会社をあげるよ。
でも、1人だけだ。
だから、お互い負けないように頑張りなさい」
その時の父の言葉は、幼い俺達はあまり意味が理解できなかった。
でも後日、母に言われた言葉は、幼い俺達を傷つけることが出来る、分かりやすいシンプルな言葉だった。
「なんでアンタ達は双子なの?どっちか1人でよかったのに…」
自分の片割れで、なくては生きていけない存在だった涼介。
でも、その一言で俺達は
引き裂かれた─…