転校生は双子くん
小さい頃から物覚えがよく、優秀だった涼介。
逆上がりも、自転車に乗れたのも全部、涼介が先だった。
いつも俺の一歩先をいく涼介。
何か新しいことを最初にやってのける涼介を隣で見るたび、俺は母の言葉を思い出した。
”どっちか1人でよかったのに…”
そして、俺は思った。
”いらないのは自分なんだ…”と。
しかし、何時からか、涼介は事あるごとに俺に譲るようになった。
2種類あるケーキ
「裕次が最初に選んでいいよ。
俺はどっちでもいいから」
1つしかないオモチャ
「俺はいらないよ。
裕次にあげる」
でも、俺は素直に喜べなかった。
”弟想いの優しい兄と、我侭な弟”
出来の良さを浮き彫りにさせられた気分になった。
(アイツは出来の悪い弟に同情しているんだ…)
そういう卑屈な考えしか出来ず、オレは益々惨めな気持ちになった。
アイツに勝てるもの─…
自分の存在意義を確かめるように、アイツに勝てる方法を考えた。
唯一、アイツに勝てると思ったのは”人付き合い”
人見知りで、人とうまく付き合えない不器用なアイツ。
俺はそこしかアイツに勝てる方法がないと考え、必要以上に愛想を振りまくようになった。
顔もよかったから、自然と女が寄ってきた。
ちょっと甘い言葉を吐けば、女達はすぐついてきた。
裏切られても、心の奥に一線ひいておけば恐くない。
傷つかずに済む…。
軽いノリで、軽い付き合い。
見かけだけのフェイク。
母親に認められようとして、”創られた仮面”はいつの間にか、剥がれなくなっていたんだ──…。