転校生は双子くん

思い起こせば16年。


私は恋愛とは縁遠かったような気がする。

恋愛よりも自分の好きな事をしているほうが楽しかったし…。



「うーん、かっこいいな。って思う人はいても別に何とも思わなかったよ?
 好きっていう気持ちが、どんなものかイマイチよく分からないよ…」


「じゃあまだ初恋も済ませてないわけ!?
16年も生きてきて!?」


香織が驚いたように言った。



私は昔から、人にこういう台詞をよく言われる。


「~まだしてないの?」

「~まだ知らないの?」


私は人より、ワンテンポ遅れているらしい。




でも私は知っている。

人が気づかないような、見逃してしまう事を─…。


空に浮かんだ真っ白い雲

道端に咲く小さな花

雨上がりに光る、キラキラの葉っぱ

猫の大きなアクビ

季節の匂い─…


自慢にはならないかもしれないけど、全部私の宝物。



でも、私もお年頃。

恋愛の1つも知ってみたいという気持ちがないわけではない。



「じゃあ、香織はどういう時、人を好きだと思うの?」


「うーん、そうね~。
私は、その人といると楽しかったり、一緒にいるとドキドキしたりするかな。
ずっと一緒にいたいと思えるような……」



一緒にいるとドキドキ?



いる…


私にもそういう人いる!



「香織!一緒にいるとドキドキする人いたよ!」


「え!?誰よ!どっち?」



一緒にいると落ち着かなくて、ドキドキする人─…。


私は、ある人の顔を思い浮かべた。








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