転校生は双子くん


チャーリーの言う通り、外観からのイメージよりは、幾らか落ち着けるお店だった。


カウンター席の他に、少人数用のちょっとした個室もあり、中で働く店員さんも気さくに声をかけてくれる。



でも、店員さんは着物を着ていたり、各テーブルには小花がちょこんと飾られていたりと、こだわりと気遣いがうかがえる素敵なお店だ。




「握りもいいけど、気軽にいろんな種類のネタを楽しむなら散らし寿司がいいと思うよ。どうする?」


「じゃあ散らしで!」


「OK」


チャーリーがオススメしてくれた通り、絶品だった。


プリプリした新鮮な魚介類、セットで添えられたお吸い物、秋野菜のお漬物、すべてが美味しく、私は見事に全部たいらげた。



「本当に美味しい魚介類を食べるなら、北海道より、こっちのほうがいいんだ」



へー、そうなんだ…。


物知りのチャーリーに感心するばかりだ。




「まだまだ先は長いよ。トイレ借りてきたら?」というチャーリーの言葉に従い、私はトイレを借りることにした。


トイレの中には琴の落ち着いた音楽が流れている。

洗面所にも綺麗なお花が飾られていたり、綿棒、金粉入りの油取り紙、歯ブラシなどアメニティーが用意されているから驚きだ。


……持って帰っちゃダメかしら……


貧乏性のわたしだけど、さすがに止めておくことにした。



「おかえり。じゃあ、行こうか」


「チャーリー!お金は?」


「ん?食い逃げ、食い逃げ。
さぁ、逃げないと追いかけてくるよ」



チャーリーは、私の手を引いてお店を出た。



私がトイレに行っている間に払っておいてくれたんだ……。



チャーリーの完璧なエスコートぶりにはビックリしてしまう。


ここまでタクシー代やら、お茶代など全部払ってもらっちゃってるけど、いいのかな……?



私のレンタル料って、そんなに高いの…?







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