脱出ゲーム ~二人の秘密の能力~
『で?正解はなんなの?』
あからさまに不機嫌そうに瀬那が聞いてくる。
暗号を解き終わった瞬間、瀬那が何かあったかと聞いてきたからせっかくだしと、暗号のことを問題形式で教えてからずっとこんな感じだ。
よっぽど解けなかったのか悔しかったんだろうな…。
あの、瀬那でも解けないなんてね。
『七瀬、今なんか私のことけなしてなかった?』
『ぐえっ!そ、そんなことないって』
瀬那、鋭い。
『それよりも、この暗号を解くカギはヒントの存在。ヒントのタヌキ。それは、動物のタヌキじゃない』
『えっ、どういうこと?』
瀬那がすぐさま聞き返して来る。
私はニッと口角を上げてから答える。
『…たぬき。それは、た、抜きってこと。つまり、暗号のたかぎはきんたこ。ろったくはにまいめ。から、た、を抜くの。というわけで答えはカギは金庫。ロックは二枚目。…ね?わかった?』
『…んんっ、わかったわよ!で?金庫に鍵はあったの?』
ほぼ半ギレな感じで瀬那が聞いてくる。
どんだけ悔しかったのだろうか…。
『それなんだけど…。さっき金庫を見たんだけどカギがかかってて分かんなかったんだよね』
そう。
テレビ台の下に置かれていた、ホテルとかによくある鉄製の小さな金庫にはカギが掛かっていた。
暗証番号を押して開けるタイプのなんだけど…。
『まあ、そりゃあそうよね。ロックは二枚目なんて書いてあるんだから。で?メモ帳の二枚目にはなんて書いてあったの?』
『さっすが、瀬那!』
実のところを言うと今まで、ロックは二枚目の部分の意味が分からなかったんだよね。
瀬那に感謝しながらメモをめくる。
『うーんと、暗証番号は○○ 黒=54 白=24 花=○○ …ってまた暗号!?』
メモにはさっきと同じ字でそう書いてあった。
『また暗号…?』
呆れたように瀬那がつぶやいた。
『黒が54で、白が24…ってどういうことだろ』
数字と色になにか関係があるってこと?でも、そうだとすると花って…?
そう考えてると、瀬那がつぶやいた。
『黒はブラック、白はホワイト、花はフラワー?』
『英語に変換してどうするの?』
『うっ…。ちょっと考えてみただけよ!』
小型犬の吠えみたいに瀬那が叫ぶ。
その声の迫力に頭がかき氷を食べた時みたいにキーンとする。
いったぁぃ…。
でも、本当にどういうことなんだろう…?
もう一度メモをじっくりと読んでみるけど、さっきのようにヒントとかは書かれていない。
これだけで答えるってことかぁ…。
そう思いながらもう一度頭の中を整理する。
うぅん。
イコールってことは言葉を数字にするってこと?
はな…くろ…。
んん?くろ?はな?
頭のモヤモヤが段々と晴れてきた気がする。
『あっ、分かった!瀬那、分かったよ』
『ちょっ、テンション高くない?…で?答えはなんなの?』
『87!花っていう言葉をそのまま数字に置き換えるんだよ。あぁ、すっきりした』
ふぅっと息を吐く。
よし!
これで、鍵も見つかるかも!
『…ん?だとしたら黒は96、白は46にならない?』
疑い深く瀬那が聞いてくる。
『…あっ、ホントだ』
試しに金庫に87の数字を入れてみたけどロックがかかったままだった。
『まったく…』
その声だけであきれた様子の瀬那が容易に想像できた。
絶対バカにされてるぅ…。
『ううん、良い考えだと思ったんだけどなぁ』
『でも、黒が96…。96が54….。どっかで聞いたことがあるような…』
『え、そう?』
聞いたことあるっけ?
全然思い浮かばないけど。
と、その時。
『…あ。分かったかも』
そんな瀬那の静かな声がまるで雫が落ちるかのように頭に響いた。