脱出ゲーム ~二人の秘密の能力~

『ふーん、なるほどね。爆弾か…』


全てを話し終えて、瀬那が考えるようにつぶやいた。


え、それだけ?


瀬那の反応はあまりにも予想外だった。


だって、爆弾だよ?


命の危機なんだよ?


『なんで瀬那そんなに落ち着いてるの?ていうか、落ち着いていられるの?』


『なんとなく、予想はしてたからね。あんな暗号が置いてあって、脱出の出来るルートが完成されてて、偶然でしたって言われる方が驚くよ。まぁ、爆弾も一応想定内ではあったけどまさかとは思ったよ』


ペラペラと瀬那が話していく。


こんなに分かってたなんて言われるとちょっと引くかも…。


『瀬那、すっごぉい…』


『本当に思ってるの?』


『思ってる、思ってる。それより、これからどうしよう?犯人を追いかけようとは思うんだけど』


私がそう言った瞬間、瀬那の声が飛び込んできた。


『ちょ、本気で言ってるの!?犯人追いかけるって…。どんだけ危ないと』


『分かってる!けど、このまま何の努力もしないで死にたくない。だからお願い、瀬那。協力してほしいの』


私が力強くそう言うと、瀬那は少し黙って、そして軽くため息をついた。


『…分かったよ。けど、絶対に危ないことはしないでよね?』


『うん、瀬那ありがとう!…あ、それで犯人の居場所のことなんだけど…』


私が瀬那に尋ねるようにそう言うと、瀬那は分かりきったように口にした。


『犯人の居場所のが分かったんでしょ?』


『えっ』


『だって七瀬の"アレ"を使えばそんなの分かることでしょ?』


本当に思ってたことを当てられてびっくりする。


いや、本当はどこかでその言葉を期待していたのかもしれない。


胸の奥の心配が少しだけ和らいだような気がした。



『…でも、使っていいのかなって。ちょっと、悩んじゃって…』


テレパシーもそして"アレ"も、いい事ばかりじゃない。


それのせいで、人から気持ち悪いと拒絶されたり、嫌われたりすることだってあるかもしれない。


もし、そうなったら…。


嫌な未来を想像してそんな恐怖に襲われそうになる。


私は、生きていけないかもしれない。


『でも、それが生まれ持った七瀬のもう一つの秘密の能力でしょ?嫌でも、嬉しくてもその能力までをひっくるめて七瀬なんだよ。万が一の時には私も味方にくらいはなってあげるし。ま、三崎廉には適当にごまかせば良いって』


私のもう一つの能力…。


そっか、テレパシーも、この能力ももう全部私なんだよね。

敵じゃない。


その言葉で何かが吹っ切れたような気がした。同時にやる気も不安の分だけぐんぐんとわいてくる。


よぉし、やらなきゃ!


『…うん、そうだね。私ちょっと行ってくる!』


『あっ、ちょっと待って!』


ドアに手を伸ばした瞬間に瀬那が声を掛けてきた。


なんか、ちょっと瀬那焦ってる?


不思議な違和感も抱きながらも聞き返す。


『なに?』


『いや…。一つ気になることがあって…』


『気になること?』


なんだか瀬那がはっきり言葉を言わないのって珍しいような…。


『うん、なんで七瀬が閉じ込められたのかが気になってて…。三崎グループの御曹司なら恨み妬みとか買ってそうだし、何かしら理由があると思う。でも、七瀬は傍から見るとぶっちゃけどこにでもいるような一般人でしょ?』


いや、なんだか失礼なような…。


なんとなく言いたいことはわかるんだけどさ。


『つまり、実は二人にはなにかしらこの状況に至ったきっかけがあるわけで、そのきっかけは二人の共通点の可能性が高いと思うの』


『確かにそう言われればそうだけど…。共通点って、今のところ同い年ってくらいしか思いつかないなぁ』


『だからこの先きっと何かあるはずなの。それも探してみて』


『うん、わかった…』


そう言うと、瀬那からの応答は途絶えた。


瀬那も色々と考えてくれているようだ。


「共通点かぁ…」


私はそうつぶやいてもう一度考えてみる。


今のところは全然分かんないけど、もっと廉のことを知ったらわかるかも。


早速色々聞いて…!


って、


「ひゃあっ!」
意気込みながら洗面所のドアを開けると目の前に真っ直ぐこちらを向いている廉の姿があった。


その瞳は完全に疑いのまなざしだった。


「お前誰と話してたんだ?」


「え?い、いやただの独り言!うん、そうそう」



胸の前で一生懸命手を横にふりながらごまかす。


バレたら絶対めんどうなことになる…!


だけど、廉の疑いは晴れなかった。


「警察か?いや、家族か?」


「だから、独り言」


「家族か。どうやって連絡したんだ?電話か?いや違うか。だったら」


「ちょっと、ストップ!一体何なの?」


こんなに質問攻めだと、なんかこのまま超能力のことを言い当てられてしまいそうな気がする。


しかも、家族と連絡してたってことはまぐれかもしれないけど当たってるし…。


「あぁ、これか?俺、人の心が読めるんだ」


他愛のない話をするように廉が話す。


その様子と言葉があまりにも合わなくて、思わず頭の中が機能しなくなりそうになる。


え?どういうこと?人の心が読める?


…って


「ええええーーっ!廉も超能力者なのっ!?」


「も?ってことは、お前…」


驚いたように廉が視線を送ってくる。


「あっ…」



私はあわてて口を押えたけど、もう遅かった。


見開かれた廉の瞳が事態の深刻さを表していた。


瀬那、ごめん。


早々に私、やっちゃったよ…。
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