脱出ゲーム ~二人の秘密の能力~
私の能力と動き始めた船

「テレパシー…」


超能力のことを廉に話すと、廉は目を見開きながらそうつぶやいた。


まあ、確かにそうなるよね…。


「超能力は実在したのか…」


感慨深いように廉がうなずく。


「え、そっちも超能力使えるんでしょ?」


「いや、俺は超能力なんて使えないぜ?」


「ええっ!だって人の心が読めるって」


人の心が読めるなんて、超能力でも使わないと出来ないんじゃ…。


「超能力じゃなくても、その人のわずかな表情の動き、声、しぐさでどんなことを考えているかが分かるんだ」


へぇぇぇ。


超能力じゃなくても、そんな事が出来ちゃうんだ…。


でも超人には違いなさそうだよね。


関心とともに一つの疑問が浮かび上がってくる。


「じゃあ、どうして超能力のこと、信じてくれたの?」


てっきり同じ超能力者だから信じてくれたのかと思ってたけど…。


「そりゃあ科学的には信じがたい事ではあるけど、お前がウソを言ってるようには見えなかったから」


そう笑みを浮かべながらも当たり前のことのように言う彼はなぜだか信用できるような気がした。


「ま、俺も超能力が使えていたら犯人の考えてたことも一瞬くらいはわかってたな」


「え、それってどういうこと?」


「緊急事態のサイレンが鳴る前、この部屋で一人で読書してたら気配も感じさせずに後ろから誰かが来て、スタンガンを当てられて気絶させられたんだ。その時にスタンガンの青白い光と一緒にほんの一瞬だけそいつの顔が見えた。…真っ白で不気味に笑った仮面をつけてたよ」


その姿を想像するだけで、ぶるっと震えてくる。


ホラー映画とかに出てきそう…。

ていうか、夢に出てきたら怖い…。


「そのあとは、緊急事態のサイレンの音で気が付いて、その時にはもう、一人で暗闇に縛られていたよ。あの手紙と共にな。…ていうか、そろそろ何か手掛かりを探さないとまずくないか?爆発まではもう二時間くらいだし」


あっ。


手掛かり、その言葉を聞いて忘れかけていたことを思い出した。


「私、犯人の居場所がわかるかも」


「え、なんで」


口を開いて廉が驚く。


瀬那には、適当にごまかして言えば良いって言われたけどテレパシーのこともばれちゃったし、もう良いよね。


それに、きっとこの人なら、信じてくれる。


スッと深呼吸をして、口を開く。

「…実は私、テレパシーだけじゃなくて、もう一つ、秘密の超能力があるの。場所とか、物に残された人の思いや感情、イメージを読み取ることのできる能力。…サイコメトリー」


初めてサイコメトリーの能力に気が付いたのは、テレパシーの少し後だった。


テレパシーと同じでそれは突然。


そしてこの能力に気が付いた時、瀬那はものすごく驚いていた。


テレパシーとは違って、瀬那にはこの能力はないから…。


「マジかよ…。で、犯人はどこにいるんだ?」


「あ、うん。私が手紙を読んだときにイメージしたのは、海が広がっていて、たくさんの機械がある部屋」


「海とたくさんの機械…?」


目を閉じて、廉が考えこむ。


もしかしたらこの船についてかなり詳しいのかも。


私も何かもっとヒントになるようなことあったっけ…。


そう思って、もう一度あのとき感じたイメージを思い出してみる。


あ、そういえば…。


「あ、あとハンドルみたいのがあった」


「操舵室か!?船の運航を操作する部屋だ」


「あ、それかも!」


なんとなくイメージと合った。


言われてみれば運転する部屋だったと思う。


「よし、それじゃあとりあえず操舵室を目指すか」


「でも、非常階段は使えないよ」


階段が使えない以上はこの階から出ることができないと思うんだけど…。


いったいどうやって移動するんだろうか。


そんな疑問が沸き上がる。


「エレベーターは見たか?犯人は俺たちに希望を与えたんだ。なら、一つくらい脱出口を残しているんじゃないか?」


「そういえば…」

言われてみれば、エレベーターは確認してなかったし、希望って言うならなにかあってもいいような気もする。


「うん、そうだね。よし、じゃあ操舵室を目指してしゅっぱーつ!」


私はそう言って自分の腕と、嫌がる廉の腕を無理やり上げたのだった。
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