脱出ゲーム ~二人の秘密の能力~
「なんだよこれ…」
画面を見た廉がつぶやくように言った。
だよね、そう思うよね。
私も最初はそうだったもん。
よしっ、ここは暗号の先輩としてリードしないとね!
「この暗号を解けば、カギのありかが見つかる。まず暗号の一つ目はこふお。そしてヒントはかな文字で打ってしまいました。…かな文字ってなんだっけ?」
「…お前、全然分かってないじゃん。かな文字ってのはひらがなとかカタカナのことだよ」
「あっ、そうそう!…ってどういうことだろ?」
「…」
呆れたような瞳で廉がこっちを見てくる。
心が読めない私にもわかる。
完全に、バカにされてる!
「バカにはしてねぇよ。ただ、引いてるだけ」
「バカにしてるってことじゃん!」
「…にしても本当にどういうことなんだろうな。かな文字で打ってしまいましたって」
あっ、話をそらした!
そう思いながらも、私も気を取り直して真面目に考える。
「かな文字で打ってしまいましたってことは、かな文字じゃないものが正解ってことだよね」
「ということは、英語か漢字か?」
「数字っていうのもあるんじゃない?」
「数字に英語、漢字…。あぁ!全然わっかんねえ!」
廉がそう叫んで頭を抱え込んだ。
私も考えてみるけど、いくら考えても答えは出なかった。
ひらがなが別の文字に変換されるといっても、その文字がそもそもわからない。
きっとなにか法則があるんだと思うけど…。
ていうか、どうして…。
「どうして、ひらがなじゃなくてかな文字なんだろう?…だって、暗号のこふおってカタカナは入ってないじゃん」
「…確かに、言われてみればそうだな。かな文字のほうが分かりにくいし。…ということはかな文字って言葉がヒントなのか?かな文字…かな文字…」
私も必死に記憶を掘り返してかな文字という言葉を探す。
なんかこの言葉、どっかで聞いたこと、ある気が…。
って、あぁ!分かった!
「「パソコンのキーボード!」」
私のその言葉は、廉の言葉とびっくりするくらいピッタリと重なった。
「パソコンのキーボードには、かな入力とローマ字入力の二パターンある。つまり、この暗号はローマ字で打とうとしたのに、間違ってかな文字で打ってしまったってことだ」
廉がいかにも偉そうに、自信満々で説明する。
…私もわかってたのに!
「…ということで、この答えはかな入力のこふおをローマ字入力で打ったものに変換して…」
そこまで言ったところで、廉が固まった。
「え?ちょっと、どうしたの?もう答えは出るじゃない。答えは…。あっ!」
そこまで言ったところで私も気が付いた。
キーボードの位置を覚えてない!
「お、お前も覚えてないのかよ」
「そ、そっちこそ!ていうかスマホとか持ってないの?」
「持ってるわけないだろ?気絶した時に盗られたんだよ!」
怒り狂ったような廉の言葉を聞いて血の気が引いていく。
…どうしよう!
もしかして、絶体絶命!?