脱出ゲーム ~二人の秘密の能力~
と、その瞬間。
頭にキーンとする声が響いた。
これは、もしかして…。
『瀬那?どうしたの?』
慌てて瀬那の応答に答える。
『ちょっと調べてたら色々分かったから七瀬にも報告しようかと…。そっちこそ、今はどんな感じ?』
『あ、ロビーに下りようとしたんだけど、ドアにカギがかかってて…。それで今映画館で暗号を解いて一つ目のカギが見つかって…。って、そうだ!』
そこまで言ったところで思いついた。
というか、思い出した。
『瀬那、パソコンのキーボードの並びを教えてくれない?』
『え?キーボード?』
『うん、暗号を解くために必要なんだけど全然思い出せなくて…。かな入力のこふおをローマ字入力で打ったものを教えてほしいの』
瀬那に聞けば分かるはずでしょ!
瀬那は暗記してそうだし、そもそも手元にパソコンありそうだし!
『良いけど…。こふおね、えーっとローマ字入力にすると確かB26じゃないかな?』
『B26?』
B26って、一体なんだろう…?
なんかもっと名前みたいなのが出てくると思ったんだけど…。
「なんか分かったのか?」
考え込んでると、廉が近づいてきた。
「あ、うん。こふおの暗号の答えがB26らしいんだけど、それが一体何なのか分からなくて」
「B26?…それって、もしかしてこれじゃないか?」
廉がそう言うと、座席のドリンクホルダーを指差した。
「えっ、ここ…?…って、あっ!そっか!」
ドリンクホルダーを見た瞬間にピンと来た。
B26、それは座席の番号なんだ!
「B26はここだな」
「…でも、何もないよ?」
廉についてきてB26の座席まで来たけどそこには何もなかった。
ここまで来たらスクリーンもかなり近い。
「きっとこの近くに何かが…」
廉のそのセリフを聞いて思い出した。
そういえば、脱出ゲームにもこういう事ってよくあるよね。
ゲームの時はとにかく色んなものを動かしてみたけど…。
私はしまわれたB26の座席に手をかけた。
ここに座ったら何か分かるかもっ!!
と、その瞬間開けた座席のすき間から何かが落ちた。
チャリン、と金属が床に落ちた音が響く。
「あっ、カギだ!」
慌てて床をのぞき込むと、そこには銀色に輝く一本のカギが落ちてた。
「…ん?でもこれ、一個目のカギと大きさ違うぞ。…保管庫?」
カギについたストラップには廉の言う通り、保管庫と書かれていた。
「なんだぁ、せっかく脱出出来ると思ったのに…」
「保管庫はあのドアの向こうだな。まぁ、とにかくそのカギを使ってみようぜ。その先にカギはあるはずだからな」
「うん、そうだね」
それもそうだよね。脱出には一歩ずつでも近付いてるもんね!
そう言って、足を踏み出した途端。
『…七瀬?私のこと忘れてない?』
低い声のトーンで思わずゾクッとする。
『あっ、えっ、忘れてなんかないよぉ!』
忘れてたなんて言えるわけがない!
『本当?まぁ、良いけど…。それより暗号は解けたの?』
『うん、これから保管庫に行ってもう一本のカギを探そうと思って。そういえば瀬那も何か話したいことあったんじゃなかった?』
『私のは…やっぱり後にする。とにかく、カギを探して。テレパシーも繋げたままでいいから』
…テレパシーと同時に声に出して話すのって意外と疲れるんだよねぇ。
そんなことを思いながらも瀬那がそう言うので、私はそのまま階段を上って保管室へと向かったのだった。