脱出ゲーム ～二人の秘密の能力～
「はぁ、まだゲームの途中だったのに…」


梅雨間近の蒸し暑い空気の中、アスファルトの地面の上で私はがっくりとうなだれる。

今日に限って気温は6月の観測史上最高らしい。暑苦しい空気が体にまとわりついて嫌になる。

どうせ出かけるなら海とかどっか涼しいものがあるとこに行きたかったよぉ。


「アンラッキーサインだったのか…」


さっきのジャンケンで瀬那に負けたピースを見て呟いていると、信号の向こうに鈴
宮コーヒーの古びた看板が見えた。


白い壁にはめられた大きな窓の内側には何人かのお客さんが食事やコーヒーを楽しんでる。


鈴宮コーヒーは、私達家族も昔からよく利用する喫茶店だ。


確か、店長がパパの大学の同級生って聞いたことがある。


「ミルクレープが美味しいんだよね」


そんな事を口にしながら空と同じ青になった信号を見て、交差点を渡り始める。


この時の私は知らなかったんだ。


まさか、これからあんな大変なことが起きるなんて。
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