脱出ゲーム ~二人の秘密の能力~
私の味方
「…はぁ」
鏡に映る、元気のない自分を見てさらにため息が出そうになる。
こんな私、私らしくない。
頑張らないと、いけないのに…。
『どうかした?』
『ひゃっ!!』
突然の瀬那の声に思わず跳ねてびっくりする。
そうだ、テレパシー繋いだままだったんだ。
『なんかあった?話なら聞くけど』
『あ…。ううん、なんでもないっ!大丈夫だから』
心配かけまいと、いつもの自分を取りつくろう。
だって、言えないもん…。
まさか…。
『…爆弾、怖い?』
『えっ…』
『だから、爆弾怖い?』
びっくりした。
いや、びっくりしたどころじゃない。
だって、私が思ってたことを当てられた。
顔だって見てもないのに…。
『なんで、分かったの…』
『分かるよ、七瀬の考えてることなんて全部分かる。だって、私達双子だよ?何年一緒にいると思ってるの?』
それは何も根拠のある理由じゃない。
だけど、どうしてか納得できた。
『…怖いよ。だって、爆弾だよ?死ぬかもしれないんだよ?…私、まだたくさんやりたいこといっぱいあるよ』
『…うん』
静かで、でも少しだけ安心するような瀬那のうなずきが私の心の奥にしまわれていたものを引き出した。
『…そんな事を思う自分も嫌になる。怖がったって何の意味もない。もっと、頑張らないといけないのに…!…っ、なのに!』
ポロポロと涙がこぼれ落ちていくのが自分でもわかった。
目頭がじんじんと熱い。
恐怖と、自分への怒りで心の中はぐっちゃぐちゃだった。
「…っ、ひっく」
涙の中で、瀬那のやさしい声が響いた。
『…私ね、知ってるよ。七瀬が頑張ってるの。だって普通、ここまで来れないと思うよ。怖くて、怯えて、部屋の中から動けないはずだよ』
『…けど、』
『七瀬は絶対に助かる!私が言うんだもの、間違いないでしょ?それに私も助けるし、三崎廉もいるんでしょ?』
瀬那の根拠の無い、ものすごい自信を聞いて思わずプッと吹き出してしまった。
『…なにその自信』
『私には七瀬の恐怖は全部は理解出来ないけど、こうやって元気づけたり、ナビゲートすることは出来るから。私はずっと七瀬の味方。…だから私を信じて』
瀬那の自信が移るように、私の心からは不安の種は消えていた。
『…うん、信じる!瀬那も私のこと信じてよね、絶対に脱出してみせるんだから!』
『その域じゃん!』
鏡の前には、自信たっぷりな、最高の笑顔の自分が映っていた。