脱出ゲーム ~二人の秘密の能力~
カランコロン。
アンティーク風の木製ドアを開けると、可愛らしいベルの音が頭上に降ってくる。
それと同時にふわっとちょっぴり苦いコーヒーの香りが漂ってきた。
木製造りのちょっと小さめなお店の中にはカウンター席、そしていくつかのテーブル席と優しいオレンジ色のソファ席が並んでいる。
日の光が入っていて優しく、落ち着く空間だ。
「いらっしゃいませ…って七瀬ちゃんじゃない」
テーブルを拭いていたエプロン姿の女性、鈴宮友梨(すずみやゆり)さんが短めのポニーテールを揺らしながらこちらに近づいてきて笑顔を見せる。
友梨さんは、店長の諭吉(ゆきち)さんの奥さんでもある。
「友梨さん、こんにちは。あの、パパがなんか資料を忘れてきちゃったって」
「あぁ、そうだった。…これこれ」
友梨さんが思い出したようにカウンターのすみっこから見慣れた小さめのトートバッグを持ってくる。
パパはいつもあのバックに仕事の資料を入れている。
「わー、ありがとうございます!」
「お父さん今、超能力シリーズの新作書いてるんでしょ?こないだ出た新刊も読んだけど、あの主人公の双子本当に七瀬ちゃんと、瀬那ちゃんそっくりだよね」
「そりゃあ、そうだろ。二人をモデルにしてるんだから」
そう言いながら、奥のキッチンからワイシャツ姿にエプロンをつけた男性、このお店の店長の諭吉さんが出てくる。
パパとは違っていつも整った髪に黒縁メガネをしてて清潔感がある。
「そっか。七瀬ちゃんも使えるもんね、超能」
「友梨!…それは」
納得したように口にした友梨さんの言葉を慌てて諭吉さんが止める。
「えっ、あっ、ごめん!」
「全く…。あいつから口止めされてるんだから。七瀬ちゃんも、本当にごめんな」
「七瀬ちゃん、ごめんね」
申し訳無さそうな表情を浮かべて二人が謝って来たので、慌てて私は首を振った。
「全然気にしないで下さい!」
「あっ、そうだ。お詫びも兼ねて新作のケーキ食べてかない?スフレチーズケーキなんだけど…。感想も聞かせて欲しいし」
しょぼくれていた友梨さんが思いついたように、提案してきた。
ケーキ!?
食べたいっ!!
食欲旺盛な私はコンマ一秒で返事をした。
「食べますっ!」
「じゃあ、持ってくるから七瀬ちゃんはどこかカウンターにでも座って待ってて」
「はい!」
私は勢い良く返事をして、キッチンに入っていく諭吉さん横目に高めのカウンターチェアに座った。
諭吉さんのケーキ、美味しんだよなぁー。
楽しみぃ!
ウキウキと高まる気持ちを抑えきれずに、ついつい口角が上がっていく。
と、その時。
「…ん?」
なんとなく視線を感じて、振り返るとソファ席のほうから帽子を深く被って、マスクをした男の人がジッ、と私を見ていた。
男の人のサングラス越しに目があった様な気がして、思わず視線を逸らす。
ちょっとうるさかったのかな…。
でも、何か…。
「…あの、友梨さん。あのお客さんってよく来るんですか?」
男の人に聞こえないように、声を潜めるようにしてカウンター越しにそっと聞く。
「え?…そういえば、ここ最近よく来てるけど。どうかした?」
「んー、何か…」
と、私が口を開いた途端、レジ前にあの男の人がやってきた。
「あ、お会計ですね。…七瀬ちゃん、ちょっと待っててね」
普通に会計をして、ドアを開けてお店を出ていく。
…んー。
私は後ろ姿を見ながら、瞳を閉じる。
「で、七瀬ちゃん、あのお客さんがどうかしたの?」
「…いえ、気のせいだったみたいです!それより、新作のケーキって…」
アンティーク風の木製ドアを開けると、可愛らしいベルの音が頭上に降ってくる。
それと同時にふわっとちょっぴり苦いコーヒーの香りが漂ってきた。
木製造りのちょっと小さめなお店の中にはカウンター席、そしていくつかのテーブル席と優しいオレンジ色のソファ席が並んでいる。
日の光が入っていて優しく、落ち着く空間だ。
「いらっしゃいませ…って七瀬ちゃんじゃない」
テーブルを拭いていたエプロン姿の女性、鈴宮友梨(すずみやゆり)さんが短めのポニーテールを揺らしながらこちらに近づいてきて笑顔を見せる。
友梨さんは、店長の諭吉(ゆきち)さんの奥さんでもある。
「友梨さん、こんにちは。あの、パパがなんか資料を忘れてきちゃったって」
「あぁ、そうだった。…これこれ」
友梨さんが思い出したようにカウンターのすみっこから見慣れた小さめのトートバッグを持ってくる。
パパはいつもあのバックに仕事の資料を入れている。
「わー、ありがとうございます!」
「お父さん今、超能力シリーズの新作書いてるんでしょ?こないだ出た新刊も読んだけど、あの主人公の双子本当に七瀬ちゃんと、瀬那ちゃんそっくりだよね」
「そりゃあ、そうだろ。二人をモデルにしてるんだから」
そう言いながら、奥のキッチンからワイシャツ姿にエプロンをつけた男性、このお店の店長の諭吉さんが出てくる。
パパとは違っていつも整った髪に黒縁メガネをしてて清潔感がある。
「そっか。七瀬ちゃんも使えるもんね、超能」
「友梨!…それは」
納得したように口にした友梨さんの言葉を慌てて諭吉さんが止める。
「えっ、あっ、ごめん!」
「全く…。あいつから口止めされてるんだから。七瀬ちゃんも、本当にごめんな」
「七瀬ちゃん、ごめんね」
申し訳無さそうな表情を浮かべて二人が謝って来たので、慌てて私は首を振った。
「全然気にしないで下さい!」
「あっ、そうだ。お詫びも兼ねて新作のケーキ食べてかない?スフレチーズケーキなんだけど…。感想も聞かせて欲しいし」
しょぼくれていた友梨さんが思いついたように、提案してきた。
ケーキ!?
食べたいっ!!
食欲旺盛な私はコンマ一秒で返事をした。
「食べますっ!」
「じゃあ、持ってくるから七瀬ちゃんはどこかカウンターにでも座って待ってて」
「はい!」
私は勢い良く返事をして、キッチンに入っていく諭吉さん横目に高めのカウンターチェアに座った。
諭吉さんのケーキ、美味しんだよなぁー。
楽しみぃ!
ウキウキと高まる気持ちを抑えきれずに、ついつい口角が上がっていく。
と、その時。
「…ん?」
なんとなく視線を感じて、振り返るとソファ席のほうから帽子を深く被って、マスクをした男の人がジッ、と私を見ていた。
男の人のサングラス越しに目があった様な気がして、思わず視線を逸らす。
ちょっとうるさかったのかな…。
でも、何か…。
「…あの、友梨さん。あのお客さんってよく来るんですか?」
男の人に聞こえないように、声を潜めるようにしてカウンター越しにそっと聞く。
「え?…そういえば、ここ最近よく来てるけど。どうかした?」
「んー、何か…」
と、私が口を開いた途端、レジ前にあの男の人がやってきた。
「あ、お会計ですね。…七瀬ちゃん、ちょっと待っててね」
普通に会計をして、ドアを開けてお店を出ていく。
…んー。
私は後ろ姿を見ながら、瞳を閉じる。
「で、七瀬ちゃん、あのお客さんがどうかしたの?」
「…いえ、気のせいだったみたいです!それより、新作のケーキって…」