たった一輪の綺麗と呼ばれる花を。
「今年も、そこは心和の席だね。」
「華和こそ、今年もお隣さんだね。」
「まあね。心和の特等席が、窓際の1番後ろのように心和の隣に座れるのは私だけだからね。」
ニコッと笑う華和の笑顔につられ、思わず微笑んでいた。
「朝のホームルーム始めるぞ。」
高2になってからも、担任の先生は変わらなかった。
1年の時から、お世話になってる先生なら私の複雑な家庭環境のことや、病気のことを1から話さなくて済むから気が楽。
「今日、新任の先生が見えられているからホームルームが終わったら全員体育館に行くように。」
新任の教師か…。
朝から、体育館で長い校長先生の話を聞かなければいけないのかと思うと憂鬱だな。
「吉野!」
「はい。」
そんなことを考えながら、窓の外を見ていると担任から急に名前を呼ばれていた。
「吉野は、自分の体調と相談して体育館に向かってくれ。
もし、体調が優れないようなら保健室で休んでいていいから。」
病気のことで、何度か倒れて救急車騒ぎになっているから、先生達の間では私の扱いが慎重になっている。
私が、自分の体調と相談しながら授業や式に参加するかしないかを決めてもいいと担任から言われた。
正直、病気の発作なんていつ出るか想像できるはずもない。
朝、元気でも。
今が、何ともなくても病気がいつ私を襲うかなんて分からないんだから。
絶対に大丈夫なんていう保証もない。
先生達も、私が倒れたら面倒なんだろうな。
「分かりました。」
まあ、そんなことは誰にも話してはいないし話すつもりもなかった。
話したところで、どうにかなる問題でもないから。
話して、周りを困らせるくらいなら最初から自分で抱え込んでいればいいだけの話。
私の返事を聞いて、担任は安心したように溜息が盛れていた。