たった一輪の綺麗と呼ばれる花を。
それから、ホームルームが終わって皆が体育館に向かったのを確認してから、ここで唯一好きな屋上へ向かった。
重い扉を開き、椅子に腰を降ろす。
温かい春の風が、私の髪をなびかせ優しく頬を包み込む。
「心和。」
「華和!?」
名前を呼ばれ、後ろを振り返ると華和が楽しそうに立っていた。
それから華和は、私の隣に腰を下ろした。
「これ、心和の好きないちごミルク。
朝、少し元気がなかったみたいだから心配で着いてきちゃった。」
そう言って、華和は私に紙パックのいちごミルクを渡し、華和もバナナミルクにストローを通していた。
「そんなことより、いいの?」
「えっ、何が?」
「いや、華和はここにいるのバレたらまずいんじゃない?」
「あー。そんなこと。」
華和は、下を向きながらも笑顔だった。
「先生に、バレて職員室に呼ばれたとしてもいいの。
それに、私も式なんて面倒だし。
私さ、こうやって心和と授業とか行事とかさぼってみたかったんだよね。
しかも、場所が屋上なんて最高のチョイスじゃない?
さすが、心和だよ。」
「華和…。ありがとう。」
きっと、華和の優しい気遣いだと思う。
華和は、どちらかといえば真面目で授業を抜け出したり休んだりすることもなかった。
小さい頃から、毎年のように皆勤賞をもらってるような子だから。
私を心配して、来てくれたんだろうな。
「今日は、よく晴れたね。」
「そうだね、空がいつもより綺麗。」
新任式が終わるまで、私は華和と一緒に流れゆく雲を見ながら話に花を咲かせていた。