which?
試合終了から30分後。
「……あ。」
やっと会場から出てきた弘樹。
通称《待ち伏せ作戦》で待ち続けていた私を見て、驚いた表情になった。
「弘樹、お疲れ様♪」
「…結莉、待ってたの?それならメールしてよ…」
「電話したけど…弘樹が出なかったんじゃん!」
私の言葉に、面倒くさそうな表情の弘樹が携帯を確認した。
「……充電切れだ。」
弘樹の携帯には真っ赤に染まった電池のマークと、充電切れを伝える機械音が響く。
……弘樹は現代人のくせに、携帯あんまり使わないからな。
メールを打つ能力も皆無に等しいし…
充電のペースも4日に1回だったはず…
弘樹の携帯をパチンと閉じた音を最後に、私たちの間には無言の空気が流れる。
唯一、耳に届くのは靴の擦れる音と車の走る音だけで。
私は必死に話題を探していた。
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