昨日、あなたに恋をした
 あのあと、ちょっとした野菜スティックを日子が作ったのだが。

 段取りの良さはさすがだが、技術的には、まだまだだ、と容赦なく判定した誠孝は、

「……鍛えねばな」
と中国四千年の技を叩き込もうとする師匠か仙人のように思っていたのだが。

 自らもあまり料理をしない香椎は、技術力が低いがゆえの、レパートリーの少なさには気づかずに。

 美人で優秀で料理までできる楓さんは非の打ち所がない人だから、沙知見さんに愛されているのに違いない、と思っていた。

 誠孝は、
「いや、あいつの『非』以外のところが知りたいんだが」
と思っていたかもしれないが……。


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