昨日、あなたに恋をした
 ありがとう、ゆーちゃん、と日子は感謝した。

 だが、裕子はさらに熱く語る。

「でも、犯人はこの会社の人間ではないと思います」

 裕子は無駄に勘が良かった。

「この会社の人たちは、日子さんが素敵なだけではなく、駄目人間なことも知っています。
 激しく嫉妬するほどの対象ではないと思っていると思います」

 裕子は思ったことを素直に口にする性格だった。

「……今、日子さんに恨まれることがあるとすれば。

 ズバリ!
 沙知見さんのことですっ。

 沙知見さんと同じマンションに住み、日子、シゲタカと呼び合っている関係なことが女性陣の恨みを買う可能性があると思いますっ。

 この会社で沙知見さんをよく知っている人は日子さんの部署の人がほとんどです。

 他の女性は遠目に見て憧れているだけなので、そこまで恋心がつのっている人はいないでしょう。

 そして、日子さんの部署はおっさん率が高く、若い女性でフリーなのは日子さんだけですっ。

 だから、犯人はきっと、沙知見さんをよく知る人か、沙知見さんの会社の人ですっ。

 ほら、同じクラスのイケメンをよそのクラスの女子や他校の女子にかっさらわれると、それ、うちのなのにって思うじゃないですかっ。

 あれですっ」
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