昨日、あなたに恋をした
「えっ?
 いえ、申し訳ないですっ。

 大丈夫ですよ、沙知見さん。
 最近は片付いていますから。

 と言いますか、沙知見さんのおかげで、散らかす物がないですから」

 そう苦笑いして見せながらも、日子はものすごく不安になっていた。

 もし、沙知見さんの部屋になったらどうしよう、と。

 みんながあの素敵な香りの沙知見さんの部屋に上がるのか。

 なんだろう。
 なんとなくやだな。

 なにが嫌なのかわからないけど、ちょっとやだな、と思う日子の頭に、誠孝と料理を作ったり……

 いや、誠孝が料理を作ったり、日子が運んだりして、楽しく呑んだ日々が蘇った。

 あの部屋でのことは、ふたりだけの思い出のままでいたいというか。

 いや、よくはわからないのだが。

 人様の部屋なのに、そんな勝手なことを思うとか……、と思ったとき、誠孝と目が合った。
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