昨日、あなたに恋をした
「どっちかって言うと、東城さんの方が、
『紅茶なら此処に……』
とか言って棚の奥から見つけてきたりしそうで怖いなって思ってたんですけど」

 そう言い、裕子は笑ったが、日子もみんなも笑えなかった。

 ゆーちゃんの頭の中の東城さんが一番サイコで怖い……と青くなっている日子には気づかずに、裕子はご機嫌なまま誠孝に話しかけている。

「沙知見さん、カプチーノにしてくださいとか言ったら、インスタントとかじゃなくて、ちゃんと淹れたやつ出してくれそうですね」

「うちでなら淹れられるが。
 淹れてこようか」

 そう裕子に訊く誠孝を見ながら、日子は、
 ……まるでカフェだ、
と思っていた。

 いつも見慣れた我が家のキッチンなのに。

 手際のいいイケメン様が立っているだけで、小洒落たカフェと化しているっ。

 素敵な焼き菓子が添えられた珈琲が、アンティークな器に入って出てきそうだ。
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