昨日、あなたに恋をした
 楓さんに命じられて?

 そんな顔色を読んだのか。

「いや、命じたのは日子じゃなくて。
 もっとなんとなく恐ろしい人だ」

 なんとなく恐ろしい人ってなんだ!?

 まさか……

 沙知見さん?

 そうか。
 沙知見さんは最初から私が犯人だとわかってて。

 自ら名乗り出るようにと、私にあんな話を振ってきたのか。

 香椎はちょっと泣きそうになる。

「……すみませんでした。
 私、子どもの頃からずっと兄の友人の沙知見さんに憧れてて。

 なのに、最近知り合ったばかりの楓さんと沙知見さんが急接近して悔しかったんです。

 あんなすごい人相手じゃ私なんかが叶うはずないし。

 沙知見さん、きっとすべてわかってたんですね。

 だから、私に調査を頼むフリして思いとどまらせようと……」

 すると、東城は少し考える風な顔をした。
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