昨日、あなたに恋をした
 聞いているのかいないのか。

 そうかね、そうかねと言いながら、部長は珈琲を一口飲み、
「いやあ、さすが美味いねえ。
 ありがとう、楓くんっ」
と感激していた。

 褒められて悪い気はしない。

 ありがとうございます、と言って、席に戻る。

 気難しい本部長が自分に頭が上がらないのは、孫とやってるオンラインゲームで俺と同じチームにいるからなんだが……。

 相手が本部長だからというわけではなく。

 慣れないゲームだが、孫と一緒に楽しみたいという懸命さが伝わってくるので、できるだけ便宜を図ってやっている。

 単にそのおかげなんだが、と思いながら、新太は珈琲を一口飲み、ついに社報を開いた。

 ……日子。

 我が従妹ながら、美しい。

 なんというか、(たたず)まいに品があって、はっとさせられる。

 なんか本人の実情にそぐわない立派なこと書いてるな……。

 見た目や仕事の能力はともかく、普段は相当にあれれ? な感じの奴なんだが。

 だが、そんな日子が好きかな、と思う。
< 347 / 535 >

この作品をシェア

pagetop