昨日、あなたに恋をした



 新太たちが借りていたのは、ドッグランが近くにある棟だった。

 ペットも一緒に過ごせる区域のようで、日子の家のサモエド、ミカエルも来ていた。

 スキレットでドイツ風パンケーキのダッチベイビーを作りながら新太が言う。

「いいぞ、お前ら結婚しても」

 いや、何故、あなたの許可がいるのですか、と日子は思っていたが。

 新太は兄にも等しい存在だし、今、ダッチベイビーを焼いてくれているし、黙っていた。

「だが、俺もちょうどこれは本気の恋かもしれないと思っていたところだ」
と言って、新太は日子を見つめる。

「結婚しても離婚するが。

 俺と日子は夫婦ではないから離婚しないし。
 親兄弟でもないから、勘当もない。

 永遠だ」

 言い切る新太に、誠孝が、

「なんか負けた気がする……」
と呟いて、

「ま、負けてませんよ、誠孝さん!」
とルシファー高道に慰められ、ミカエルに背中に乗られていた。



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