昨日、あなたに恋をした



 俺はまだ、しばらくは気持ちを切り替えられそうにないな、と思いながら、東城は足りなくなった生クリームの買い出し向かっていた。

 見知った顔の女が目の前に立つ。

 あの社長令嬢だった。

 何故、ここにっ、と身構える東城に彼女は言う。

「ごめんなさい、東条さん。
 私、ほんとはあなたに謝りたくて……」

 それで付け回してたの、と彼女は恥ずかしそうに言った。

 ごめんなさい、と深々と頭を下げてくる。

「いや、いいんだ。
 気にするな。

 なんか今の仕事の方が向いてたみたいで、気に入ってるし」

 そんな東城のやさしさに彼女は涙ぐむ。

「ありがとう、東城さん。
 私ね、今度、お見合いするの」

 ……そうか、と東城は感慨深く頷いた。
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