昨日、あなたに恋をした
「あー、疲れましたね~。
でも、楽しかったです」
夕方、誠孝とともに家に帰った日子は壁際にキャリーバッグを置いた。
ガランと片付いている部屋を感慨深く眺める。
「せっかく片付いたとこだったけど。
まあ、荷物が減っててよかったってことで」
帰り道、誠孝が言ってきたのだ。
「……部屋、広いし、ひとつでいいんじゃないか?」
と。
日子が誠孝の部屋の美しい調度品も仄かないい香りも気に入っていたので、日子の部屋を解約して、ふたりで誠孝の部屋に住むことになったのだ。
ここに引っ越してきた日からのことが思い出されたが、よく考えたら、まだそんなに経っていなかった。
でも、なんか濃密な数ヶ月だったな……と日子が思ったとき、誠孝が言い出した。
「だが、引っ越すのなら、もっと捨てないとな」
……もうこの部屋のもの、全部捨てたんでいいんじゃないんですかね、と日子が思ったとき、相変わらず容赦のない誠孝が言ってくる。
「あの世にまで持っていきたいものはこの部屋の中にあるか」
「ありま……」
ありません、と言いかけ、日子はやめた。