昨日、あなたに恋をした
日子たちのその後――
あー、疲れたな、今日も……。
仕事でボロボロになって帰った日子は、マンションの廊下で足を止めた。
右を見て、左を見る。
右は自分の部屋、左は誠孝の部屋だ。
少し迷って、左の部屋のチャイムを鳴らした。
……いや、鍵は持っているのだが。
すぐにドアが開いて、誠孝が顔を出す。
「今日は遅かったな」
と言う誠孝の後ろから、いい匂いが漂ってくる。
子どもの頃、遊んで帰るとき、住宅街の家々から美味しい匂いがしていた。
あんな感じの匂いだ。
違うのは、たぶん、この美味しい匂いの料理を自分も食べられるということだ。