昨日、あなたに恋をした



「後輩可愛いし、上司にも頼りにされてるし。

 仕事もやりがいあるし。

 でも……、

 でも、ときどき、このまま、ここにパタッと倒れて寝たいと思うのよ」

 トイレで化粧直しをしながら、楓日子(かえで にちこ)がそうもらすと、同期の中村羽根(はね)が、
「いいよ、倒れなよ、このトイレの床で」
と笑って言ってくる。

「いや~、最近、遊びに行く時間もないしさ~。
 家で寝る前にちょっとゲームやるのが息抜きだったんだけど。

 それすらも、職場のパソコン以外で目使うのやだなって思っちゃって、やってないしさー」
と日子が愚痴ると、羽根は、はははは、と笑い、

「あんたって見た目華やかで、仕事も実績あげてるし、上手く職場ってものを乗りこなしてるように見えるけど。

 あんたみたいなのもある意味、社畜よね」
と言いながら、ポーチに口紅を放り込む。

「今度、早く上がれそうな日に呑みに行こうよ。
 お疲れっ」
と言って、羽根はトイレを出て行った。
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