昨日、あなたに恋をした
ふたりでエレベーターに乗り、エントランスホールに降りると、出勤途中らしい見覚えのある若夫婦と出会った。
「おはようございます」
と日子と一緒に彼らと挨拶を交わしながら、誠孝は、ふと思う。
……もしや、自分たちも仲良く出勤する夫婦に見えただろうか、と。
なんとなく日子と距離をとってしまう。
だが、渋い顔をして片付け計画について話している日子は気づかなかったようだ。
日子はしばらく行ったところで、ようやく足を止め、叫ぶ。
「なんで離れてってるんですかっ、沙知見さんっ。
私、独り言言ってるおかしな人になってしまったではないですかっ」
警備員が笑っていた。
今朝は東城ではなく、愛想のいいおじさんだった。