水もしたたる善い神様 ~沈丁花の記憶~




 その後、優月は目覚める事なくそのまま優月としての生涯を終えた。


 次に記憶を残して生き返った優月は、違う少女として昔生きた村の近くに生まれた。
 4歳ぐらいになって優月として生きた記憶を鮮明に気づき、その意味を理解していった。
 そのため、すぐに両親にせがんで村まで連れて行ってもらって山まで遊びに行った。その時すでに矢鏡神社は廃墟になりはてていたが、両親は「何てかわいそうなの」と一緒にお参りしてくれた。

 その後、25歳で事故に遭い死に、次は病気で死んだ。
 誕生日に必ず死ぬのはとても怖かった。死ぬ時期がわかっているからこそ、その日を恐れて暮らす事もあった。
 次はどうやって死ぬのだろうか。
 けれど、それよりも恐ろしい事は自分が死んで、昔の記憶を理解するまでの時間、矢鏡神社が取り壊しされているのではないか。そんな恐怖があった。成人し、自由に矢鏡神社を参拝するようになると、その神社に友人を連れていくこともあった。けれど、優月が死んだと、継続してお参りをしてくれる人にはなかなか出会えなかった。
 25歳で死ぬ優月にとって他人との交流は、死ぬときに悲しみが深くなるため、ほとんど交流を持たないようにしていたので、神社へ一緒に参拝してくれる関係を結べるまでいくのが困難であった。それに、辺鄙なところにあるし、ほぼ廃墟だ。友人たちは皆「ここに神様なんているの?」と、怪訝な目で見ていた。

 そのため、矢鏡神社の参拝者を見つけるのは難しくなった。


 そして、何度も死んでいくうちに優月の体に異変も起こった。
 死期が近くなると、人外のものたちの気配を見れるようになってきたのだ。
 それを感じたのは3回目の24歳のころだった、矢鏡神社を訪れた時に、誰かの視線を感じたのだ。怖くはない、とても優しい気配で、優月を見守ってくれるようなぬくもりさえ感じられるものであった。
 それが左京だ、と優月はすぐにわかった。
 死期が近くなると、死の気を纏うために感じられるようになるのかもしれない。それなら、4回目はどうなるのだろうか。左京を見る事が出来るのだろうか。


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