水もしたたる善い神様 ~沈丁花の記憶~
「こいつは、紅月のファンの男か?」
「え、俺のファンじゃなくて、俺がファンなの?そんな事初めて言われたー。紅月ちゃんも神様も面白いね」
「こいつがおまえのファンのはずがないだろう。何でそうなるんだ」
「えっと、肇くんは舞台役者さんなの、結構人気の役者さんみたいで」
「紅月ちゃんは知らなかったみたいだけどね。俺の知名度もまだまだだなー」
何で、こいつは紅月を気軽に「紅月ちゃん」と呼んでいるのだろうか。
遊び人か?どうして、紅月と知り合ったんだ?沸々の疑問と不信感が募っていく。
さっさと依頼を終わらせて、この男から離れてしまおう。そう思い、自分から肇という男に話をふることにした。
「私が、知らなかっただけだから」
「まーねー」
「それで、俺への依頼というのは、これらの事か?」
「あぁ。そういう事ー。どうしてこうなるかわからなくてね」
「それを知りたいだけか。祓う必要はないか?」
「うん、可愛いしね」
肇はニコニコとしてながら、周りに集まる猫たちの頭や顎を撫でながら、目を細めて笑う。どうやら、猫が好きなようで、その猫たちも触られては、嬉しそうに声を上げている。
「それにしても、珍しいな。こんなにも死んでいる猫に懐かれるなんて」