水もしたたる善い神様 ~沈丁花の記憶~
「あと2日で、25歳になるんです、私」
「あ、………あぁ。誕生日、近いな」
突然、そんな話を始めた紅月に戸惑いながらも矢鏡はそう返事をする。
すると、紅月は苦笑いをしながら頷いた。
「………25歳になると、死ぬ。そんな約束になっているんです」
「それは、蛇神との約束なのか?」
「やっぱり知ってしまったんですね……」
龍神が矢鏡に教えた事。
それが、神と契約をしたのではないか、というのだ。
それを紅月はすんなりと認めた。信じられない事だが、真実なのだろう。現に、紅月の体は蛇神の呪いにかかっているのだから。
そうなると疑問は1つだった。
紅月は、蛇神とどんな契約をしたのか。命を対価にしてまで、彼女は何を望んだのか。
「紅月。おまえは、命と引き換えに何を望んだんだ?」
「ずっと嘘をついていてすみません。私は、ずっとずっと矢鏡様の事を知っていました」
「………何を言って」
「私が望んだ事。それは、ずっとずっと矢鏡様をお参りする事です」