転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~
「アル……」
スーリアはまだ呼び慣れないその愛称を小さな声で呟く。
胸の奥に何とも言えないこそばゆさを感じた。急に恥ずかしくなって「きゃあ」と小さい悲鳴を上げて近くにあったクッションを抱きしめ、顔を埋める。じっとしていられなくて足をバタバタとすると、足になにかふわふわしたものを感じた。
「ねえ、ミア。素敵なひとだと思うでしょう?」
スーリアは下を覗き、足もとにいた仔猫のミアの両脇に手を差し込んで視線を合わせるように抱き上げた。ミアはスーリアに返事するように『ミャア』と一つ鳴く。
「やっぱり! 私もとても素敵な人だと思うの。あんな人とお友達になれて私は幸運ね」
スーリアはミアをぎゅっと抱きしめる。目を閉じると脳裏にアルフォークの優しい眼差しが浮かび、低く耳に心地よい声で『スー』と呼ぶ声が聞こえた気がした。
「うふふっ」
自然とスーリアの両口の端は持ち上がる。
まだよくわからないけれど、何かが自分の中で芽生えるのを感じる。今日もいい夢が見られそうな気がして、スーリアはベッドの中に潜り込んだ。