転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~
リアちゃんは少しだけ首をコテンと横に傾げた。
スーリアはリアちゃんから引き継いだ記憶を反芻する。確かに、あの自家製ジャムを作るのはスーリアの役目だ。『倉田恵』時代と同様、今のスーリアはあまり料理をしない。せいぜい卵を溶いたり、サラダのドレッシングを混ぜるくらいだ。なので、すっかりと失念していた。
「父さんも母さんも姉さんも、私が作った野いちごのジャムが好きなのよ。しっかりと覚えてね」
リアちゃんはそう言いながら、てきぱきと作業台に材料を広げてゆく。摘み立ての野いちごはたっぷりと。お砂糖は山盛りに。アクセントのレモン汁は一個分。
「ねえ。これって何が何グラムとか、詳しいレシピは無いの?」
「レシピは私の頭の中にあったでしょう??」
リアちゃんに聞き返されて、スーリアは肩を竦めた。確かにジャムを作った記憶はある。けれど、実際に作ったことが無いスーリアとしては心配なのだ。それに、リアちゃんのジャム作りはいつも目分量だ。
「さっ、煮るわよ」