転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~
「お嬢様、ルーエン様がお見えになっています」

「まあ、ルーエン様が?」

 『ルーエン』と言う名前を聞いた途端、マニエルは表情をぱぁっと明るくした。その大きな金色の瞳が喜びに染まり、キラキラと輝く。

 伯爵令嬢のマニエルには幼いときに親に決められた婚約者がいる。彼との出会いは婚約者が十三歳、マニエルが九歳の時だった。

 おまえの未来の旦那様に会いに行くのだよ、と父である伯爵に連れられて行ったお屋敷は伯爵家であるマニエルの実家にひけを取らない大きな門構えだった。庭にはガゼボが設えられ、美しく配置された木や花で落ち着いた雰囲気を漂わせていた。

「マニィ、ここで待っていてごらん。すぐにご子息が来るから」

 父親はマニエルを一人でガゼボの椅子に座らせると、屋敷の方向に歩いてゆく。残されたマニエルはあたりを見まわした。

「あ、蝶々だわ」

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