転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~
スーリアは驚いて声をあげた。早歩きで三十分かかると言えば、端から端まで三キロくらいあるのだろうか。とんでもない広さだ。
「私が花を育てる場所はどこになるのですか?」
「魔術研究所の薬草園の隣だと聞いている。ルーのいる場所の近くだ」
「アルは遠いの?」
アルフォークはスーリアの質問に、意表を突かれたような顔をした。スーリアは何の気なしに言ってしまった自らの発言にはっとして手で口を塞ぐ。
「俺は反対側なんだ。だが、ルーのところにはよく用事があって行っている。近くに来た時は立ち寄るようにしよう」
「いえっ! どうせ一時間しか居ないですし、お忙しいところ悪いですし」
「俺が行きたいんだ。スーの花には癒される」
「! ……そうですか? ありがとうございます」
スーリアは頬を赤らめて俯いた。言葉尻がどんどん小さくなってゆく。
──花に癒されるって言ったのよ。私に癒される、じゃないのよ? 落ち着け、わたし!!
涼しい顔で隣を歩くアルフォークをチラッと見上げ、スーリアは自らに自惚れるなと喝を入れたのだった。