転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~

 ポーションの蓋を開けると、とても人が口にするものとは思えない程の悪臭が漂った。マニエルはごくりと唾を飲んだ。鼻を摘まむと、意を決して一気にそれを飲み干したのだった。


 ***


「お、猫がいる。ずいぶん毛並みがいい猫だな」

 王宮を歩いていると、マニエルを見つけた道行く騎士や侍女が珍しそうに視線を向ける。それもそのはず、マニエルは見事な毛並みの美しいペルシャネコに変身した。一目見ただけで高級猫であること明らかだ。

「おーい。猫! おいで」

 たまたま前方から歩いてきた魔術師と覚しき若者がマニエルに手を差し出す。マニエルはツンと澄ましてその若者の横を素通りした。マニエルが呼ばれて応える若い男性は世界中でルーエンただ一人であり、他には有り得ないのである。気安く人に呼びかけるなと言いたい。

「ニャー」
「お、鳴いた」

 気安く呼ぶなと言ったつもりが相手には通じなかった。マニエルはその若者を無視すると再び歩き始めた。
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