転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~

「ニャー」
「本当に綺麗な猫だわ。瞳が金色なのね」

 宿敵はマニエルを見つめて微笑んだ。褒めたって懐柔されるものかとマニエルはキッと宿敵を睨み据えた。宿敵はキョトンとした顔でマニエルを見つめている。

「リアちゃん、何しているの? あれ、猫?」

 しばらく間合いを取ったままで睨みを利かせていると、心地よい低音が聞こえてマニエルは体を震わせた。

 ──もしかしてっ!

 この声は、忘れるはずもない愛しの婚約者の声だ。振り返ると案の定、筆頭魔術師のケープを羽織った婚約者がいた。なんと恐るべし、職場で見る制服パワー! いつも素敵な婚約者が更に素敵に見える。犯罪級のかっこよさである。

「あ、ルーエンさん。この猫ちゃんが迷い込んで来たんですけど、ここの猫ですか?」

 宿敵はこともあろうか婚約者に馴れ馴れしく話しかけた。婚約者であるマニエルを差し置き話しかけるとは、許しがたき暴挙である。マニエルは「フー!!」と宿敵を威嚇した。そんなマニエルの体が(くう)に浮く。
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