転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~
宿敵はにっこりと微笑むと花束を作り始めた。いつもルーエンがマニエルに持ってくる、シンプルながら可愛らしい見た目の花束だ。
ここに来てマニエルは気づいた。どうやら、会話の内容と二人の距離感を見る限り、ルーエンと目の前の少女は色恋の関係ではなく、純粋に友人同士のように見えた。
「こんな感じでどうでしょう? 今日も婚約者さんが好きなピンク色でまとめてみました」
「うん、いいね。きっと喜ぶと思う」
目の前の宿敵あらため、少女はそれを聞いて嬉しそうにはにかんだ。
差し出された花束はピンク色の花と、小さな白い花がバランスよくまとめられている。少女はポケットから黄色のリボンを取り出すと、器用にそれにリボンをかけ、あっという間にシンプルな花束を作り上げた。
「はい、どうぞ」
「ありがとう。マニィはこの花が気に入るかな?」
「ニャー」
もちろんですわ、と答えたつもりである。ルーエンは目を細めるとマニエルの両脇に手を入れて目線を合わせた。大好きな人の顔が近づく。鼻の頭にふにっと柔らかい感触が触れて、すぐに離れた。
──キ、キ、キスされたわーーー!!!