転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~

「男性が装花から花を引き抜いて女性に渡すものだから、すぐに花瓶から花が無くなってしまうんです。予想外でした」
「確かに、舞踏会で花を差し出している男はよく見かけるな」

 苦笑するスーリアと同様に、アルフォークも苦笑して見せた。
 意中のご令嬢に花を差し出して口説こうとする貴族男性は舞踏会会場では珍しくはない。あの花はどこから持ってきたのだろうかと、常々、アルフォークも不思議に思っていた。まさか会場の装花から引き抜いているとは。

「随分と装花師泣かせな風習だな」
「本当に。一緒にお手伝いしているミリーはぷんぷんに怒っていたわ」

 スーリアは、貴族の令息相手に見えないようにあっかんべーしていたミリーを思い出し、クスクスと笑った。アルフォークもそれを聞きながら笑っていたが、ふと何かを思いついたように花を見始めた。

「摘んでもいいか?」
「はい。装花はダメですけど、花畑ならいいですよ」
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