転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~

 スーリアは茶目っ気たっぷりに答える。それを聞いたアルフォークは口の端を持ち上げると、チューリップを一輪だけ摘んだ。

「スー。どうかこれを受け取って」

 アルフォークから差し出された一輪のチューリップ。色は赤だ。スーリアはそれを受け取らないまま、アルフォークの顔を見返した。

「どう言う意味なのか……測りかねてます」
「口説いているんだ。今宵はみな、意中の女性に花を差し出して口説いているだろう?」
「私は貴族ではないので……。からかわれているのも本気にしてしまうわ」
「本気だ」

 アルフォークの紫の双眸が、まっすぐにスーリアを射貫いた。赤のチューリップの花言葉は『愛の告白』。スーリアはこんな都合の良すぎる奇蹟が信じられず、首を横にかしげた。こんな幸せな夢は、醒めたときが辛すぎる。

「アルは貴族で、私は平民だわ」
「俺は継げる爵位がないから、平民だと言っただろう?」
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