転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~
「スーは俺では嫌かな?」
アルフォークの沈んだ声色に、スーリアは驚いた。嫌など、とんでもない誤解だ。スーリアはむしろ、アルフォークが……
「いいえ! いいえ! あなたが好きだわ」
アルフォークの顔がホッとしたような表情に変わる。
「では、あとは何が不安?」
「都合のよすぎる夢が醒めないかと……」
「大丈夫だ。改めてスー、俺は君が好きだ。これを受け取ってくれるだろうか?」
スーリアの前に一輪のチューリップが差し出される。
「……はい」
スーリアは震える手でそれを受け取った。
嬉しそうに微笑んだアルフォークは、チューリップごとスーリアを優しく抱きしめた。体を包み込むのはアルフォークの優しい温もり。
こんなに都合のよいことは、やっぱり夢かもしれない。けれど、夢でもいいと思わせるほどの幸福感がスーリアを包み込み、目頭が喜びで熱くなるのを感じた。
***
宮殿の大広間へ戻って早々、アルフォークはきつい口調で問い詰められて、肩を竦めた。
「アル? どこに行っていたの??」
アルフォークの目の前には、たいそう不服そうな顔をしたプリリア王女が立っている。
舞踏会の最中にプリリア王女にご機嫌伺いする列が絶えることはないのだから、別にその間にアルフォークがどこに行こうが構わないはずだ。しかし、一介の魔法騎士であるアルフォークが、王女相手にそんなことを言えるはずもない。