転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~
ベッドから起き上がるともぞもぞと着替えをして階段を下りる。
体中に痛みを感じていたのもその日だけで、翌日にはすっかり元気になり声も問題なく出せるようになった。きっとスーリアの身体に恵の魂がしっかりと馴染んだのだろう。
幸い、元のスーリアの記憶はあのときに全てこちらに取り込まれたので人の名前や物の場所なども問題なくわかる。多少、性格や仕草など元のスーリアと違うところがあるようだが、家族は恐ろしい目にあったショックで一時的に混乱しているのだろうと暖かく見守ってくれている。
洗面台で顔を洗って鏡をみると、鏡には以前の恵とは似ても似つかない姿が映っていてる。
薄いピンクの緩いウェーブがかかったロングヘアに長いまつ毛に縁どられたぱっちりとした大きな薄緑色の瞳。鼻梁はすっきりと通っており肌は透き通るように白い。
何日か経ってもこれにはちっとも慣れない。これまでの『倉田恵』時代には一度も出会ったことがないような色彩を纏った美少女だ。
平凡な見た目だった恵にはスーリアの見た目はとても新鮮だ。
なんだかお洒落をするのが楽しくて、スーリアはピンクの髪を器用に三つ編みにして、最後にくるりと巻いてお団子に結い上げると階段を下りた。