転生聖女の異世界スローライフ~奇跡の花を育てたら魔法騎士に溺愛されました~
 帰り道、アルフォークは愛馬のレックスでスーリアを送ってくれた。スーリアはレックスに乗るのが大好きだ。背の低いスーリアでも視線が高くなり、あたりが見渡せるし、後ろからアルフォークがスーリアを包み込むように手綱を握るから。
 ちらりと後ろを振り返れば、スーリアが振り返ったことに気づいたアルフォークと目が合った。至近距離で微笑むアルフォークの姿に、スーリアの胸はトクンと跳ねる。スーリアは慌てて前を向き直った。

「スーといると落ち着く」

 ホッとしたようなアルフォークの声がして、頭の上に柔らかな感触があった。アルフォークが頬を寄せたのだ。

「私は、アルといるとドキドキするよ」

 スーリアが真っ赤になって俯くと、後ろでアルフォークがふっと笑う気配して、腰に回る腕に力がこもった。

 家に到着したとき、辺りはすでに薄暗くなっていた。スーリアは一人で馬の乗り降りが出来ない。先に降りたアルフォークが手を差し出したので、スーリアは自分の手を重ねた。スーリアの体がふわりと(くう)に浮き、足が地面へと着く。

「ありがとう、アル」
「どういたしまして」

 玄関前までスーリアを送り、踵を返そうとしていたアルフォークはふと立ち止まった。
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